
シングルセル解析に興味があるけど、何から始めたら良いか分からない…

コマンド不要で簡単にシングルセルデータを解析できる方法ってある?
そんな悩み・疑問を抱えているあなたへ。実は、シングルセルのデータ解析は思っているより簡単に始められるんです!
この記事では、10x Genomics社のデータと専用ソフトウェア「Loupe Browser」を使ったシングルセル解析の基本的な流れを、超初心者向けに徹底解説します。
具体的なデータダウンロードから、遺伝子発現データの可視化まで、実際の操作画面をイメージしながらスムーズに進められるよう、丁寧にステップを追って説明します。
この記事を読めば「難しそう」と感じていたシングルセル解析が、グッと身近なものに変わるかも!?
はじめに
本記事では、10x Genomics社のデータとソフトウェアを活用したシングルセル解析の手法について超初心者向けにわかりやすく簡単に解説いたします。
なお、細胞調整、ライブラリ作成、シークエンスについては本記事では扱いません。
まず、10x Genomics社のホームページで公開されている下記の動画を視聴して、同社のシングルセル解析について基本的なイメージをつかんでください。

Loupe Browserのダウンロード
ここからは、10x Genomics社のLoupe Browserという専用ソフトウェアを使ったシングルセル解析の基本操作を、超初心者向けに解説していきます。
まず、同社のホームページで公開されている下記の動画を視聴して、Loupe Browserについて理解しましょう。

次に、以下の10x Genomics社のサイトからLoupe Browserをダウンロードしてください。


データのダウンロード
続いて、以下の10x Genomics社のサイトからシングルセル解析データをダウンロードしましょう。
自身の興味に合わせて、各動物種や細胞・組織のデータをダウンロードすることができます。

本記事では、以下の条件で検索するとヒットするデータ「5k Mouse Splenocytes」を用いた解析方法を紹介します。
- Platform: Chromium
- Species: Mouse
- Sample/tissue type: Spleen
ユーザー登録が必要な場合は、アカウントを作成してください。ログイン後、次の情報にアクセスできます。
- Dataset overview:サンプルの概要情報を確認できます。
- Output and supplemental files:Loupe Browserで利用可能な解析ファイルをダウンロードできます。
Output and supplemental files から以下の2種類のファイルをダウンロードしてください。
- Gene Expression output files File type: Gene Expression – Loupe Browser file
- TCR output files File type: VDJ TCR – Loupe V(D)J Browser file
これで、ソフトウェアとデータの準備が整いました。次は、Loupe Browserの基本操作を見ていきましょう。
Loupe Browserの使い方
データの読み込み(インポート)
まず、ダウンロードしたGene Expression – Loupe Browser fileをLoupe Browserで開きます。
続いて、V(D)J ClonotypeからVDJ TCR – Loupe V(D)J Browser fileをインポート(アップロード)しましょう。

これにより、Loupe Browser上でTCRレパトア情報が見られるようになります。

※本記事では触れませんが、同様にBCRのファイルをインポートすれば、BCRレパトア情報の解析も行えます。
データのReanalyze
続いて、「Reanalyze」機能を使用して、死細胞などの不要なデータを除去します。
手順の詳細は、以下のウェビナーの42:30以降を参照してください。

「Reanalyze」をクリックすると別ウインドウが開きます


以下、Reanalyzeの各ステップを簡単に図示します。各パラメータの設定は、上述した動画の内容を参考に、自身のデータと目的に応じて調整してください。
- Review Barcodes → Next
- Threshold by UMIs → UMI 9-14 (Log2) → Next
- Thresholds by Features → >7.5 (Log2) → Next
- Select a reference genome → Mouseを選択 → Submit → Next
- Mitochondrial UMIs → <15% → Next
- Reanalyze → t-SNE/UMAPの両方にチェック → 別名を入力 → Recluster
Review Barcodes → Next

Threshold by UMIs → UMI 9-14 (Log2) → Next

Thresholds by Features → >7.5 (Log2) → Next

Select a reference genome → Mouseを選択 → Submit → Next

Mitochondrial UMIs → <15% → Next

Reanalyze → t-SNE/UMAPにそれぞれチェック → 新しい解析名を入力 → Recluster

以降の解析では、この「Reanalyze」したデータを使用します。

アノテーション
「Clusters」では、細胞のクラスタリング結果を確認できます。

「Features」に遺伝子名を入力することで、各細胞(各クラスター)における遺伝子発現量を可視化できます。

複数の遺伝子発現を比較しながら、各クラスターがどのような特徴を持つ細胞集団かを考えて、アノテーション(例:T細胞、B細胞などの細胞タイプを識別)を行います。
アノテーションを行うには、対象サンプルに含まれる細胞集団と、各集団に特異的に発現する遺伝子に関する知識が必要です。
対象サンプルに関する十分な事前知識がない場合は、Perplexityなどの生成AIなどに「マウス脾臓のシングルセル解析をしています。代表的な細胞集団とその特徴的な遺伝子を教えてください」といった質問をするのも有効です。
生成AIを使った情報検索については、下記の記事もご参照ください👇
「Features」の「Create a new feature list」を選択すると、複数のリストを作成できます。さらに「Co-expression」を使えば、2つの遺伝子の発現を同時に可視化することも可能です。

「Advanced Selection」では条件を指定し、新たなクラスターを作成できます。
「Advanced Selection」 → 「Create new rule」 → 「Save barcode」の順に進めてください。

遺伝子発現比較
「Clusters」でクラスターを選択し、「Run Differential Expression」をクリックすると、「選択したクラスター」と「(選択したクラスターを除く)サンプル全体」の遺伝子発現を比較できます。

結果はテーブル形式で表示されます。設定変更や表の出力は、表の右上にあるアイコンから行えます。

複数のクラスターを選択して、遺伝子発現を比較することも可能です。

設定の「Current feature list」で、「Search for Features」で指定した遺伝子の結果のみを表示させることもできます。

まとめ
本記事では、シングルセル解析の第一歩として、10x Genomics社のデータと「Loupe Browser」を活用した基本的な解析手順を解説しました。
具体的には、Loupe Browserのダウンロードからデータインポート、不要なデータを除去するReanalyze機能、そして遺伝子発現データの可視化とアノテーション、さらに遺伝子発現比較の方法まで、超初心者の方にも分かりやすく説明しました。
この記事が、Loupe Browserの基本操作を習得し、シングルセル解析の面白さを実感するのに役立てば幸いです。
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