便利なチャットソフトやアプリがある昨今でも、メールを連絡手段に使用している大学の研究室は多いと思います。研究室内だけならメールを使う頻度はそれ程でなくても、研究室外(学内、学外)の人に連絡を取るのにメールを使うことは多いでしょう。
研究室生活を送る上でメールの使用は避けては通れないですが、「メールの書き方」などの「メールについてのあれこれ」を大学(の講義など)で学ぶことは少ないと思います。
本記事は、現役大学教員ある私が学生に知って欲しいと考える “研究室に所属するようになったら知って欲しい「メールについてのあれこれ」” について書いています。
私のX(Twitter)アカウント「博士の生活講座@hakase_seikatsu」でしたポスト(ツイート)のいくつかを加筆・修正して作成しました。
- 『仕事ができる人のパワポはなぜ2色なのか?』を読んでメールの書き方を学ぶ
- 読んで貰える文章を書く
- 最初の数行で概要が分かるように書く
- 回答を求める場合には期限を明示する
- 「お手すきの際に…」というワードは要注意
- すぐに返信する
- 言葉遣いよりも「用件を明確に伝える」と「返信が早い」のが大事
- できるだけ客観的な情報を共有する
- 情報伝達に誤解が生じない表現・レイアウトを心がける
- 相手の質問文を引用して回答する
- 返信はすぐに貰えるとは限らない
- 複数人から返信を貰うのは難しいし面倒
- To 欄の宛先だけでなく CC 欄の宛先も記載する
- 返信は CC の人も含めて全員へする
- 情報入力はできるだけコピペする
- 過去に関連するやり取りがあるなら当時の情報を共有する
- 添付ファイルの内容をメール本文中にもコピペする
- 容量が大きいファイルを添付するのは避ける
- 外部の人にメールを送る時はネットで定型文を検索する
- 口頭連絡と文章連絡を組み合わせて使う
- 日本語を読めない人に送るメールには英語の翻訳をつける
- 英語のメールはうかつに削除しない
- 案内メールには参加・登録サイトの URL を本文中に記載する
- メールだと伝わらないが口頭だと伝わるのは相手に頼っているのかも
『仕事ができる人のパワポはなぜ2色なのか?』を読んでメールの書き方を学ぶ
ビジネス書ですが、研究室生活でも役立つメールの書き方・使い方について学べる本です。
でぶどり君の挿絵がとても可愛らしいこともあって、とても読みやすい本です。まずはこの本を読んでメールの書き方の基本を学びましょう。この記事の記載もこの本の内容を参考にしている部分が多いです。
読んで貰える文章を書く
どんなメールでも丁寧に読んで貰えるわけではありません。
例えば、連続して文章を送れるチャットとは異なり、メールは1通で内容を簡潔させるのが望ましいです。補足メールを送ることはできますが、同じ件に関して連続して何通もメールを送ってこられると「1通にまとめて送ってこいや!」と思います。
また、下記のような話やメール文は(丁寧に)読んで貰える確率が低く、理解度も下がり、レスポンスも悪くなります。
- 目的が分からない
- 要点がまとまっていない
- 不必要に長い
読んで貰うメールを書くのには意識と技術が必要です。読んで貰えるメールを書くことを普段から心がけましょう。
最初の数行で概要が分かるように書く
〇〇について相談したくメールしました。相談事項は下記3点です。ご意見や修正箇所などありましたらご連絡ください。
- 〇〇の進め方について
- ◇◇の対応について
- △△の開催について
以下、各項目についての詳細です。…
コツとして「メールを書いた目的」と「相手に求める行動」を文頭に明示するのをオススメします。
「メールを書いた目的」が報告・連絡・相談・質問・情報共有などのいずれに該当するのか、メールの最初に示すと読み手も安心して読むことができます。逆に、目的が分からないまま長々と文章を書かれると、読み手はメールの意図が分からず困惑します。
「相手に求める行動」が確認・返信・提案などのいずれなのかもメールの序盤に明示して、メールの読み手がどんなアクションをすべきか伝えましょう。内容の詳細は、その後に記載すれば OK です。長々と書いているが、結局読んだ側に何をして欲しいか分からない文章を送ってはいけません。
本文中にランダムに質問や相談が散りばめられているメールは、要点を見落とすリスクがあり、読み手の SAN 値もごりごり削れます。読み手を発狂させないように気を付けましょう。
回答を求める場合には期限を明示する
何かを依頼する際に「期限の明示」をすることは重要です。期限が明示されない依頼は取り組む優先度が下がります。
基本的に「期限ありの依頼」の方が優先されるので、「期限なしの依頼」はどんどん後回しになります。期限がないと「やるのはいつでもよいか…」と考えて取り組むモチベーションも下がります。
期限を明示するのは依頼する側にもメリットがあります。期限を明示しない依頼は、相手の返事をいつまで待ったら良いかが分からなくなります。
期限を明示すれば…
- その期限内にするのが無理なら連絡が来る
- 期限を過ぎても連絡がなければ催促しやすい
「期限を明示しない依頼」は「やらなくてもよい依頼」と思われても仕方ありません。
「お手すきの際に…」というワードは要注意
仕事中に「お手すきの時間」は基本的にはありません。
多くの大人は常に複数のタスクを優先度を考えながらこなしています。なので「お手すきの時間」は作らないと生まれません。自然と「お手すきの時間」を待っていたら数週間~数ヶ月後になるかも知れません。
「お手すきの際に…」という依頼だと「お手すき(暇な時)はないのでやらなくて良い」と思われても仕方ありません。返事が欲しければ期限を指定しましょう
すぐに返信する
メールにはすぐに返信する癖をつけましょう。返信がないと、送り手は読み手の状態が下記のいずれであるかを判断できません。
- 読んで対応している
- 読んだけど対応していない
- 読んでいない
- 届いていない
すぐに対応するのが難しい場合は「対応を考えて〇〇までにまた連絡します」などひとまず返信しておくのがだいたい吉です。
返信が必要がない場合でも、メールを受け取ったら「メール受け取りました」や「対応を進めておきます」などの返信をするのが良いです。何のレスポンスもないと送り手は「届いていない」、「届いたけど迷惑メールフォルダに入って読まれていない」などの可能性も考慮しないといけません。
「タイミング等を考えてメールの返信を迷う」より「即レスする」方が良い場合も多いです。返信に適切なタイミングはないし、あっても判断するのは難しいです。
メールにすぐ返信することは誰でもできてコスパ良く信頼される方法です。優秀な人にはメール返信も早い人が多い印象もあります。
言葉遣いよりも「用件を明確に伝える」と「返信が早い」のが大事
丁寧な言葉遣いのメールでも、用件が不明瞭でレスポンスが遅いと仕事は進みません。
「言葉遣いは丁寧だけど、用件が分かりにくい文章を書く返信がやたら遅い人」よりも「言葉遣いは雑だが、用件が明示されている文章を書く返信が早い人」の方が助かります。
言葉遣いで迷っているよりは、多少言葉遣いが雑でも、用件を分かりやすく迅速に伝えた方が良いです。
できるだけ客観的な情報を共有する
メールは会話と異なり、曖昧な事があってもその場で確認することはできません。それゆえ、できるだけ客観的な情報を共有することが重要です。
具体的には数値・写真・動画などの情報を共有しましょう。
例) 実験室が普段より暖かい気がする。エアコンが壊れているのではないか?
- 実験室の温度が〇〇 ℃なので設定温度より△△以上も高い (数値)
- エアコンのコントロールパネル表示に異常はない (写真)
- エアコン本体のランプが点滅し異音を発している (動画)
特に画像や動画があると伝わる情報量が格段にアップします。全てを文章で伝えようとすると、読み手の背景知識や理解力を考慮して、文章表現にかなり気を遣う必要があります。画像や動画があれば文章が多少いい加減でも伝わります。
メールでの画像共有には Gyazo がおすすめです。
- 画面上でエリアを選択するだけでスクリーンショットが作成できる
- URL で画像共有できるので画像添付が不要
画像共有のハードルが下がるので、コミュニケーションが円滑になります。無料プランでも十分に使えます。
情報伝達に誤解が生じない表現・レイアウトを心がける
メールでは情報伝達に誤解が生じない表現・レイアウトを心がけましょう。
例) 日時の提案の際に「10, 11, 12日の午後」ではなく下記のように記載しましょう。
10 日:終日
11 日:終日
12 日:午後
時期 (日時・年齢) の連絡は相対的ではなく絶対的な情報を伝えましょう。
- 来週の実験 → 〇月△日の実験
- 8週齢のネズミ🐭 → 〇月△日生まれのネズミ🐭
書き手と読み手の背景知識は異なるし、それが原因で誤解も生まれます。メール送信前に誤解を招く表現がないかチェックしましょう
相手の質問文を引用して回答する
メールでは相手の質問文を引用して回答すると、回答が分かりやすくなり、回答忘れも防げます。
>次のミーティングの日時はいつにしますか? (相手の文章をコピペ。太字・イタリック・下線を引いて引用であることを明示すると分かりやすい)
〇月△日の◇時にしましょう。(自分の回答)
回答文だけだと、何の質問に対する回答か分かりにくいです。相手の質問文を引用をすれば、質問の数が多くても回答を忘れる可能性を下げられます。論文の査読者への回答方法と同じです。
返信はすぐに貰えるとは限らない
メールの返信はすぐに貰えるとは限りません。
メールがいつ読まれていつ返信されるかは読み手の「緊急性、忙しさ、性格、書き手との関係性」などによって決まります。既読しているかも分からないし、催促してもすぐに返信して貰えるとも限りません。
早く返信が欲しければ「早く連絡する」のと「分かりやすい文面にする」のが最良です。
複数人から返信を貰うのは難しいし面倒
複数人に同時に了承を得る場合は「賛成の人は連絡ください」より「異論があれば連絡ください」の方が良いです。
1対1の連絡と異なり、多数への連絡(メール、掲示板、目安箱)の返答率は低いです。意見や了承を求めるスタイルだと、返答がなかった時に身動きが取れなくなります。
「〇〇の計画で進めようと思いますが、異論がある方はご連絡を」というスタイルなら、返答がなくても計画を進めることができます。
またミーティングや忘年会の出欠をメールで取る際も注意です。複数人から送られてくるメールの内容を逐一チェックするのは予想以上に大変です。開催候補日が複数になると幹事の手間は膨大になります。
「調整さん」などのスケジュール管理ツールを使うのをおすすめします。
To 欄の宛先だけでなく CC 欄の宛先も記載する
例) 〇〇様、(CC △△様、)
併記する利点は下記です。
- CC で情報共有されている旨と範囲を明示する
- CC を明示することでメール返信時に CC の人を宛先から外されない
CC の人が多い場合は「CC △△プロジェクト関係者、」などと書いて、CC に人が入っていることを明記すればOK。
返信は CC の人も含めて全員へする
メールの返信は基本的には「CC を含む全員へ返信」です。
CC の宛先に入っている人は情報共有すべき人です。CC を外して返信すると、返信を受け取った人が CC の人にメールをわざわざ転送しなくてはいけないかも。
特別な理由 (例 送り手だけに情報共有したい) 場合を除いて、全員に返信するのが無難です。
情報入力はできるだけコピペする
情報入力の際に手入力するとミスが起こります。
住所・氏名・電話番号・メールアドレスなどは、過去に提出して問題なかった書類やメールからコピペしましょう。
手入力は最後の手段です。やむを得ず手入力する際はよくよく確認しましょう。
過去に関連するやり取りがあるなら当時の情報を共有する
ある件に関してメールを書く時に、過去に関連するやり取りがあるならば当時の情報を共有すると意思疎通がスムーズになります。共有方法の例は下記。
- やり取りした日付を伝える
- やり取りしたメール文面をコピペ or PDF 化して添付する
「2023年4月に同内容の依頼をしています」と言うだけで先方は情報を探しやすくなります。メール文面をPDF 化は「メールソフトの印刷ボタン → PDFを選択」でできます。
社会人は受けとるメールの量も尋常ではありません。人によっては1日100通を超えるメールを受け取り、それらのメールの内容と重要度を判断し、限られた時間内に返信や対応をする必要があります。
そんな時に「あの件の対応をお願いします(あの件についての説明は皆無)」みたいなメールを送ってこられると「あの件」について把握し直すところから始めないといけません。対応も遅れるし、そもそも対応を後回しにしたくなります。
相手が状況把握しやすくなる努力をしましょう。
添付ファイルの内容をメール本文中にもコピペする
簡単でも良いので、添付ファイルの概要が分かるように内容をメール本文中にもコピペしましょう。
- ファイルを開かなくても内容をだいたい把握できるので読み手のストレスが軽減
- 添付ファイルの文章をコピペするだけなので簡単
- メール文末に貼り付ければ本文を邪魔しない
ファイルを開かないと内容が分からないメールを送るのは避けましょう。
容量が大きいファイルを添付するのは避ける
容量が大きいファイルをメールに添付するとうまく送受信できなかったり、メールフォルダ容量を圧迫する原因になります。不必要に容量が大きいファイルを添付するのは避けましょう。
容量が大きいファイルを共有する時は PDF 化するのも手です。
- 大容量ファイルはメール添付するのが難しい場合あり
- 画像を沢山使用する PowerPoint ファイルは容量が多くなりがち
- PDF に変換すると容量を減らすことができる
受け取る側がパワポで編集しないのであれば PDF で共有しても良いかも。
PDF のファイル容量を圧縮するときは iLovePDF が便利です。
外部の人にメールを送る時はネットで定型文を検索する
外部の人にメール(依頼、御礼、謝罪)を送る時はネットで定型文を検索しましょう。
伝えるべき事項の漏れがないかを確認できます。
ただし文章をそのままコピペするのはやめましょう。コピペだとバレますし、宛名等を間違うリスクもあります。多少拙かったりぎこちなくとも、自分の言葉で書いた文章の方が伝わります。
口頭連絡と文章連絡を組み合わせて使う
口頭連絡と文章連絡はお互いに補足するように使うと効果的です。
- どちらか一方の連絡だけでは誤解や伝え忘れが生まれる
- メールや LINE で概要を伝えて口頭で詳細を伝えるのもあり(逆もまたしかり)
口頭または文章のどちらかだけより情報伝達がスムーズになります。
口頭で相談や質問がある時も、メールで事前に内容を共有するのも有効です。口頭でいきなり回答を求められても、即座に最適な回答をできるとは限りません。メールで事前に内容を伝えておけば、答える側も考える時間ができるのでラクです。
日本語を読めない人に送るメールには英語の翻訳をつける
日本語を読めない人を宛先に含んだメールにはできるだけ英語の翻訳もつけましょう。
自身で翻訳して貰う手もありますが、そもそも大事か分からないメールの翻訳は面倒です (私なら面倒でしないかも)。
- 英文の作成が大変なら日本文を DeepL にコピペして出てきた英文を貼るだけでもOK
- それも面倒ならせめて「Important, be sure to translate and check the content!(重要、翻訳して必ず内容を確認してください!)」などの英文をメールのタイトルや冒頭に入れる
英語のメールはうかつに削除しない
英語のメールはうかつに削除しないように注意しましょう。
大半は迷惑メールかもですが、中には「論文投稿の承認を求めるメール」など大事なものもあります。共著者になっている論文が投稿中の時は特に注意しましょう。
削除しないでひとまず迷惑メールフォルダに入れておけば必要な時に捜せるかも知れません。特別な理由がない限り、メールを完全削除することはやめた方が良いかも。
教員側は、学生(特に学部生)を論文の共著者する場合、「学生が英語のメールを見落としたり、迷惑メールと勘違いして削除したりする可能性」を考慮した方が良いです。出版社から著者に対して何かしらのアクション(投稿の承認作業など)を求めるメールが届いた場合などは、教員からも「〇〇の対応を求めるメールが届いているはずなので対応してください」と連絡するのが安全です。
案内メールには参加・登録サイトの URL を本文中に記載する
セミナーチラシの PDF だけを添付した案内メールを送るのは避けましょう。
チラシのスキャン画像や QRコードだけしか送られてこないと、PCから参加登録するためにURLを手入力したり、QRコードをスマホで読んで登録しないといけません。
オンラインセミナーは星の数ほどあります。その中で参加者を増やしたいと思うなら、参加ハードルを下げる工夫をしましょう。
メールだと伝わらないが口頭だと伝わるのは相手に頼っているのかも
「メールだと伝わらないけど口頭で話すと伝わる」という場合は、聞き手がこちらの意を汲んでくれていたり、相手の理解力に頼っている可能性があります。つまり、聞き手に負担を強いています。
メールだと伝わらなかったが口頭で相談したら解決したというケースは、その理由を考えて改善しましょう。
- 図や写真を見ながら相談する必要があった → 添付ファイルや Gyazo での共有を検討
- 相談相手がうまいこと内容を聞き出してまとめてくれた → 相手に負担をかけているので反省
- 内容自体は重要でなく、ただ話を聞いて欲しかった → 相手とタイミングは選びましょう
口頭での相談は、相手の時間の拘束性が高い点にも留意しましょう。
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