【まとめ】現役大学教員が考える「文章やスライドの添削を依頼する時の心構え」

研究・実験・勉強

本記事は、現役大学教員ある私が考える「文章やスライドの添削を依頼する時の心構え」をまとめたものです。

私のX(Twitter)アカウント「博士の生活講座@hakase_seikatsu」でしたポスト(ツイート)のいくつかを加筆・修正して作成しました。

学生が文章(申請書、要旨、論文)やスライド(学会発表)の添削を教員に依頼する場合を想定して書きました。添削を依頼する時や添削されたものが返却された時の疑問解決につながれば幸いです。

締め切りに余裕を持って添削を依頼する

添削依頼されたものが未完成であったも方向性が大きく間違っていても、締め切りまでの残り時間に余裕があれば修正は可能です。

逆に、締め切りまでの残り時間がない状態で添削を依頼すると…

  • 添削者の行動を制限することになる(そもそも添削の時間が取れない可能性もある)
  • 締め切りまでに修正可能な点のみしか指摘できない

例えば「提出締切が2日後の文章の添削を依頼する」のは、下記を言っているのと同じです。

  • この2日間で添削する時間を作れ (← 失礼かも)
  • 2日間で修正可能な点のみ指摘しろ、2日間で修正できない点は指摘するな (← 十分な添削が不可能、添削を依頼する意義が薄い)

一度や二度の添削では済まずに、完成までに予想以上の時間がかかる場合もあります。

どの程度添削されるか予想できない場合」や「本気で文章を良くしたいと思って添削を依頼する場合」は、できるだけ早く依頼しましょう。

添削はひとまず20%の完成度で依頼する

20%の完成度で添削依頼すれば…

  • 添削者の負担が少ない
  • 方向性が間違っていて0%から作り直すことになってもダメージが最小限で済む

逆に「方向性を間違って作った100%のもの」は添削する方もされる方も辛いです。0%から作り直すダメージもデカいです。

まずは20%の完成度で方向性が合っていることを確認して貰いましょう。方向性が正しいことが確認できたら、次は100%の完成形を作って再び添削依頼すればOKです。

本質的でない指摘箇所を減らす努力をする

スライドや文章の添削をお願いする際は、本質的でない指摘箇所を減らす努力をしましょう。

例)図が整列していない、文字のフォント・大きさがバラバラ、誤字・脱字が多い

指摘する側も人間です。些末な(どうでもよい)指摘箇所が多いと、本質的な指摘をする気になれません。

「ある箇所の指摘」が他の箇所にも当てはまらないか確認する

1箇所指摘されたら、同じ修正箇所が他にもないかチェックしましょう。

例) 文章のある箇所で「化学→科学」という添削を受けた

⇒ Wordの検索機能で「化学」を調べて同じミスがないかチェック

同じミス(誤字・誤用)が文章中に複数あっても、添削者が丁寧に全てを指摘するとは限らないし、全て指摘することを期待するのは高望みです。

同じミスがないか調べるのは添削される側の仕事です。

添削の意図を説明して貰えるとは限らない

スライド・ポスター・論文・申請書に対するダメ出しを貰った時に「なぜダメなのか?」を説明して貰えるとは限りません。

下記の場合は説明されないかも。

  • 説明する意義が小さい、コストとリターンが釣り合わない、説明すると長くなる (誤字・脱字、文法や言葉の意味の説明からする必要がある、今後に役立たない)
  • 説明しても理解できない可能性が高い
  • 添削する側も理由をうまく説明できない(「説明できないけど、何かが違う」と感じる)

添削意図は基本的に説明して貰えないと思った方が良いです。詳しく説明して貰えたら感謝しましょう。

添削者の意図を考えるのは大事ですが、全てに理由を求めていると身動きができなくなります。添削者に説明を求めても納得いく説明が貰えるとは限りませんし、全ての添削に説明を求めていると「面倒な奴」と認識されて気軽に添削して貰えなくなる可能性もあります。

信頼できる人の助言にはとりあえず従った方が良いこともあります。「納得いく説明がない添削には従えない」と思うような人には、そもそも添削を依頼する意味はないかも知れません。

ある程度のレベルに達していないと添削できない

添削依頼するものがある程度のレベルに達していないと、具体的な修正箇所を指摘することはできません。

例)「剣道の突きを教えてくれ」と言われて、野球のバットでフルスイングを見せられても「まずは竹刀を持ってきて」としか言えない(バットで突きを教えるのは難しいし非効率的)。

文章・スライド・発表の添削においても「〇〇を勉強して作り直して」としか言えないこともあります。具体的に指摘できる段階(レベル)にないということです。

ノーコメント ≠ ノープロブレム

文章・スライド添削時のノーコメントはノープロブレムを意味するとは限りません。

下記の場合は問題があっても指摘されないかも。

  • 指摘箇所が多すぎる(例 問題点が100個あっても、時間・体力・精神的な制約から全ては指摘できない)
  • 適切な修正ができるように問題点や改善案を具体的に指摘することが難しい(添削する側の文章力や添削される側の理解力の問題)
  • 「指摘しても修正しないかも」と添削者に思われている(添削者に信頼されていない)

下記に努めましょう。

  • 指摘される箇所をできるだけ減らす
  • 指摘されなかった箇所も自身で推敲を重ねる
  • 指摘された箇所を修正する素直さを持つ(普段から信頼される行動を心掛ける)

信頼されることの大切さや信頼される方法については下記の動画が参考になります。

添削された箇所を全て把握する

添削箇所が多いと添削箇所を見落とすことがあります。同じ人に同じ文章の添削を2回以上依頼する場合、初回の添削箇所を見落として次の添削を依頼すると、添削者に「添削を見落としている」、悪い場合は「添削を無視している」と思われます。添削するモチベーションや信頼度が下がります。

添削された箇所は漏れなく全て把握しましょう。添削者が Word の変更履歴を残してくれている場合は「すべての変更履歴/コメント」を表示して、添削に対して対応しましょう。

添削者が変更履歴を残していない場合は「文章比較ツール」を使えば、変更前後の文章で具体的にどこか異なるか分かります。Word の変更履歴が残っていない状態でも、文章の変わった箇所が分かるので便利です。

文章比較ツール

添削指摘された箇所には、基本的には全て何かしらの対応をします。意図があって添削箇所への対応をせずに2回目以降の添削を依頼する場合は、対応しなかった理由を説明するべきでしょう。「添削への対応」や「対応をしない理由の説明」をせずに更なる添削を依頼すると、添削者に「添削を見落としている」か「添削を無視している」と思われます。

良い文章やスライドを作るために参考になる本など

学振、奨学金、研究費の申請書で良文を書きたい人におすすめの本です。悪い文章とは何か、なぜ悪いのか、どうすれば良くなるのかが分かります。

Videos — Garr Reynolds
Videos by Garr Reynolds on Presentation Zen, Storytelling, Visual Communication, TED Talks, Bamboo as metaphor for Resil...

良いプレゼンテーションとは何かを知ることができます。

口頭発表用のスライド作りの参考にしてください。

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