【学会年会費は自腹?】学生が知っておくべき学会費用負担の考え方

研究・実験・勉強

学会発表したいけど、お金がかかりそう…

そう不安に思っている学生さん、いませんか?

学会発表は、研究成果を共有し、他の研究者と交流できる貴重な機会です。

しかし、参加費や交通費は研究室が負担しても、 学会の年会費は自腹で支払う場合が多い ことをご存知ですか?

実は、多くの大学・研究室では、年会費は学生の自己負担となっているケースも多いようです。

なんで年会費は自腹なの? 参加費は負担してくれるのに…

このような疑問をお持ちの皆さんも多いのではないでしょうか?

この記事では、 学会年会費に関する疑問を解消するための情報をまとめました。

具体的には、

  • 年会費と参加費の違い
  • 年会費が自腹になる理由
  • 年会費を自腹で支払う際の注意点

などを詳しく解説していきます。

この記事を読めば、 学会年会費に関する不安や疑問が解消され、安心して学会活動に臨めるようになるでしょう。

ぜひ最後まで読んで、学会活動に役立ててくださいね!

学会の年会費と参加費の違い

まず、学会の年会費と参加費の違いを理解しておきましょう。

  • 年会費: (組織としての)学会に所属する、つまり学会員になるための会費です。毎年支払う必要があります。会員になると、学会発表、学会誌の購読、会員限定イベントへの参加などの権利・特典が得られます。
  • 参加費: (イベントとしての)学会に参加するための費用です。この場合の学会は、総会や学術集会などと呼ばれることもあります。学会参加ごとに支払います。

学会発表を行うには、多くの場合、学会員であることが条件となります。つまり、学会発表する場合は年会費と参加費の両方の支払いが必要になります。

一方、発表をせずに参加だけする場合は、年会費の支払いが必須ではなく、参加費だけの支払いで済む場合もあります。ただし、学会員以外が学会に参加する場合、参加費が高く設定されていることが多いです。

年会費参加費
学会発表する払う必要あり払う必要あり
学会発表せずに参加だけする払わなくても良い
(参加費が高くなる可能性あり)
払う必要あり

年会費は自腹?

学生にとって気になるのは、年会費を自腹で支払う必要があるのかどうか、という点だと思います。

基本的には、教員の指示で学会に参加する場合自分の意思で参加する場合で、費用負担の考え方が異なります。

学会費用の負担先の考え方
  • 教員の指示で参加する:基本的に研究室や大学が費用を負担(場合によっては学生が一部負担することも)
  • 学生の意思で参加する:基本的に自己負担(自腹)

詳しくは、以前の記事「【支給 or 自腹?】学生の学会発表・参加の費用(交通費など)の考え方 【その学会参加は経費で落ちますか?】」で解説していますので、ぜひ参考にしてください↓

つまり学会の年会費も、「教員の指示で学会に参加・発表する場合」は研究室や大学が費用を負担し、「学生の意思で参加・発表する場合」は自腹、という考え方が基本だと思います。

なぜ年会費は自腹の場合が多い?

教員の指示で学会に参加・発表する場合、参加費・交通費・宿泊費などは研究室が負担することが多いのに、年会費は学生が負担する(自腹となる)ことにしている研究室は多いと感じています(これは私の体感なので、実際のところは分かりません)。

その理由について、いくつか考えてみました。

理由1:年会費はサブスクリプション方式

参加費は学会に参加するごとに支払いますが、年会費は学会への参加・発表の有無にかかわらず、毎年支払う必要があります。動画配信サービスのサブスクリプションみたいなものです。

もし、学生の学会発表のために、ある年の年会費を研究室が負担すると、「翌年以降、学会発表しない年の年会費は誰が負担するのか?」という問題が生じます。

「学会発表しない年の年会費も研究室が負担する」の問題点

「学会発表しない年の年会費も研究室が負担する」のは、研究室にとって大きな経済的負担となります。裕福な研究室でない限り、現実的なシステムとは言えません。

在籍する学生の数や、学生の在籍年数が多くなるほど、その負担は増していきます。しかも、研究室はその負担の程度を完全にコントロールできないという問題もあります。

また、「学会発表しない学生の年会費を支払うのが、研究費の使い方として適切なのか?」という倫理的な問題も出てきます。

「学会発表を行う年の年会費は研究室が負担し、学会発表を行わない年の年会費は学生が負担する」の問題点

「学会発表を行う年の年会費は研究室が負担し、学会発表を行わない年の年会費は学生が負担する」というルールにすると、教員と学生の間で、負担に関する認識のズレが生じやすく、トラブルに発展する可能性があります。

トラブルを避けるためには、教員は学生にルールをきちんと伝え、理解してもらう必要があります。しかし、学会の会費システムは複雑な場合もあるので、これがなかなか難しい作業です。

教員がどんなに丁寧に説明したつもりでも、学生が「去年は研究室が負担してくれたから、今年も負担してくれるだろう」と思って、学会発表しない年の年会費を(立て替え払いのつもりで)払ってしまうトラブルは避けきれません。

その場合、学生に納得して自腹を切ってもらうにしても、学会に連絡して返金してもらうにしても、研究室が立て替えるにしても、いずれの場合も面倒な手続きが必要になります。

理由2:学会の年会費と参加費を払う時期の違い

学会の年会費と参加費を支払う時期が大きくずれている場合、年会費を支払う時点では、その年の学会参加・発表の有無を判断できないことがあります。その場合、「学会発表を行う年の年会費は研究室が負担する」というシステムにするのは難しいです。

例えば、年会費の支払いが4月で、学会発表の締め切りが8月の場合、年会費を支払う時点では、学会発表ができるかどうかはまだ分かりません。

学会発表する予定で学生が(立て替え払いのつもりで)年会費を払っていても、「発表できるだけのデータがない」などの理由から学会発表が取りやめになるかもしれません。そうなると、学生が既に支払った年会費の扱いについてトラブルになる可能性があります。

「学会参加しない学生に対して、研究室が年会費分の支払いを既に終えていた場合」の問題点

研究室が学生に対して年会費分のお金を支払っていた場合、学会発表が取りやめになっても、年会費の返還を学生に求めるのは制度上難しいか、できても手続きが面倒な可能性が高いです。

「学会発表が確定するまで、研究室が学生に対して年会費分の支払いをしない場合」の問題点

学会発表が確定するまで、研究室が学生に対して年会費分の支払いをしないことは、制度上はできるかもしれません。しかし、この場合、学生に年会費を支払ったことが分かる書類(振込明細書など)を長期間保管させておく必要があり、紛失のリスクがあります。

学会発表が決定したので年会費分の支払いをしようと思ったら、振込明細書をなくして支払いができない、ということになったら大変です。

上述したいずれの場合でも、学生が「学会発表できないことが分かっていたなら、年会費は払わなかった」と考えていた場合、結局はトラブルの原因になるかもしれません。このようなトラブルを避けるために、年会費は学生が負担することにしている研究室が多いかも知れません。

「初回の年会費の支払いは研究室負担、それ以降の支払いは学生負担」の問題点

初めて発表する学会の年会費を払う場合は、参加費と同時期に払うことになります。従って、「初回の年会費の支払いは研究室負担、それ以降の支払いは学生負担」というルールにすることもできそうです。

しかし、この場合は、「初回は年会費を払ってもらったから、次回以降も払ってもらえるだろう」という誤解を生まないように、教員は学生に十分に説明する必要があります。

学会の年会費や参加費のシステムは複雑なので、学生にその仕組みを正しく理解してもらうのは至難の業です。

しかも、学会発表の締め切りと学会開催日が異なる年度だと、学会発表をするのに必要な年会費の支払いがどの年度になるのか分からない、という問題も出てきます

例えば、2023年1月に演題登録、2023年5月に学会開催だとすると、演題登録や学会発表するために2022年度、2023年度のいずれ(あるいは両方)の年会費を払う必要があるのか、非常に分かりにくいです。

正しいところは学会に問い合わせるしかありません。しかし、「学会発表1回だけしたら、それ以降の年会費は払わずに脱会する可能性もあるので、今回発表するために最低限払わないといけない年会費の年度を教えてください」という主旨の問い合わせを、学会側に失礼なくスマートにするのは、これまた至難の業です。

学生に問い合わせさせるのもリスクがありますし、学生が発表する度に教員が問い合わせるのも大変です。

理由3:身銭を切ることで学会発表に慎重かつ真剣になるから

人は、自分の大切なお金を使うときは、慎重になります。

学会に関わるすべての費用(年会費、参加費、旅費)をすべて研究室が負担する場合、「学会発表をすればタダで旅行できる」と考える学生が出てくるかもしれません。

そこまではいかなくても、身銭を切っていない学会参加は、身銭を切っている場合と比べて「せっかくお金を払ったのだから、積極的に学ぼう」という意識が低くなる可能性があります。

学生の「学会発表したい!」という要望は断りにくい

教員は、学生から「学会で発表したい!」と言われると、なかなか断れないものです。

教員から見ると、その学生が「自分の研究を多くの人に知ってもらい、フィードバックをもらって研究を発展させたい!」と考えているのか、「発表するだけでタダで旅行できるから学会に行きたい!」と考えているのかは分かりません。

年会費を学生に負担させて身銭を切らせることで、後者の考えの学生を減らす目的があるのかもしれません。

学会発表の成果は評価しにくい

実験用の試薬や器具を購入する場合と異なり、学会発表を行っても具体的に目に見える成果は得られないことが多く、その成果が学会発表によって直接もたらされたものかを評価するのも難しいです。

もちろん、学会発表にはメリットが多くあります。

学会発表のメリットの例
  • 研究者としての成長
    • 研究内容の整理・深化: 発表のために研究内容をまとめる過程で、自身の研究の強みと弱みを客観的に見つめ直すことができます。
    • プレゼンテーション能力の向上: 人前で分かりやすく説明するスキル、質疑応答への対応能力を高めることができます。
    • 研究者としての自信: 発表を成功させることで、研究者としての自信やモチベーションに繋がります。
    • フィードバックの獲得: 他の研究者から貴重な意見やアドバイスをもらえ、研究の質を高めることができます。
  • 研究の進展
    • 情報発信: 自身の研究成果を広く発信し、研究分野の発展に貢献することができます。
    • 共同研究の可能性: 他の研究者と交流することで、共同研究に繋がる可能性があります。
  • キャリアパス
    • 就職・転職活動: 学会発表の経験は、就職や転職活動においてアピールポイントになります。
    • 人脈形成: 同じ研究分野の研究者と繋がりを作り、将来的なキャリアに役立てることができます。
  • その他
    • 最新情報の入手: 学会では、最新の研究動向や技術情報を得ることができます。
    • モチベーション向上: 他の研究者の発表を聞くことで、自身の研究に対するモチベーションを高めることができます。

しかしながら、これらのメリットや成果は、研究費で試薬や器具を購入した場合と異なり、目に見えない場合が多く、その成果をもたらした原因が学会発表なのか判断するのが難しい場合も多いです。

つまり、「学生に学会発表させることが、研究の進展や学生の成長にとって最適な研究費の使途なのか?」を判断することは難しい、ということです。だからこそ、学生に年会費を負担させることで、身銭を切ってでも学会発表をして多くの成果を得ようとする学生をスクリーニングする意図があるのかもしれません。

ちなみに、教員に対して「学会参加・発表が意義あるものだった」とアピールすることは重要です。学会参加・発表させた成果を実感してもらうことで、次回以降の学会参加・発表のチャンスが訪れやすくなるかもしれません。

学会参加・発表後に指導教員と共有すべきことの例
  • 自身の発表で「誰に・どんな質問をされて・どの様に回答したか」:学会でされる質問は、論文投稿時に査読者もする可能性がある
  • 自身や所属研究室の研究に関連する他研究室の発表内容:新たな技術の導入、共同研究への発展、競争相手の動向把握につながる可能性がある

以上より、学生の「学会発表したい!」という要望は断りにくく、学会発表の成果は評価しにくいことから、年会費は学生の自腹にすることで慎重に学会発表を検討してほしいという意図があるのかもしれません。学生自身が費用を負担することで、学会活動への責任感や参加意識を高めることができる、という考えもありそうです。

理由4:制度上払うことができない

大学の制度上、学生の学会年会費を研究費から支払うことができない場合もあるかもしれません。「学会発表する場合は払えるが、参加だけだと払えない」などの細かいルールもあるかもしれません。

学生の学会参加・発表の度に大学事務に問い合わせて、年会費の支払いの可否を判断するのは面倒でしょう。また、その結果「ある学生には支払える、ある学生には支払えない」となった場合、その結果に納得しない学生が出てくるかもしれませんし、教員もそうなった経緯を納得できるように説明できるとは限りません。

大学の支払い制度に関連するトラブルを避けるために、学生の年会費は一律で自己負担としている可能性もありそうです。

理由5:お金がない

これは単純に、学生の年会費を払うだけのお金が研究室にない、という場合です。

学生1人分の年会費を1年分だけ支払うならまだしも、複数の学生の年会費を複数年間支払うとなると、かなりの額になります。

学会の参加費に関しては、お金がなければ学会参加・発表しないという選択を取ることができますが、年会費は学会参加・発表の有無にかかわらず支払わなければいけません。

「去年は学生の年会費を支払えたのに、今年は研究費がなくて支払えない…」という事態を避けるために、学生の年会費は自己負担にしている可能性がありそうです。

年会費を自腹で払う時の注意点は?

自腹がいやなら学会に参加・発表しないという選択も

年会費を自腹で払うのが嫌なら、そもそも学会に参加・発表しないという選択肢もあります。学会加入・参加・発表は義務ではありません。嫌なら参加しなくても良いのです。

以前の記事で学生の学会発表・参加の費用(交通費など)についても書きましたが、学会年会費の支払いに関して下記のような状況に当てはまる場合は、しかるべき相手や窓口に相談するのが良いかもしれません。

ラボ・大学ごとの制度・状況・考え方があると思いますので、その良し悪しを一概に論ずることはできません。ただ、下記の3つを満たす場合は、大学内外の機密性が担保される窓口 (学生相談室、研究倫理相談窓口など) に相談することも考えて良いと思います。

  1. 教員から学会参加・発表を指示されたが、学会費用は自腹である
  2. 1の学会参加・発表を断れない。あるいは、断った場合に学生に不利益が生じる (例 実験できない、卒業できない)
  3. 1, 2の状況に疑問・不安・不満・負担・苦痛を感じている
【支給 or 自腹?】学生の学会発表・参加の費用(交通費など)の考え方 【その学会参加は経費で落ちますか?】


会員を継続するか毎年判断する

年会費は学会参加・発表の有無にかかわらず、毎年支払う必要があります。そのため、学会参加・発表した翌年以降も年会費を払い続けるか(会員を継続するか)を毎年判断する必要があります。

ある年に学会発表したが、翌年以降は学会に参加しないと判断したら、脱会手続きを検討しても良いでしょう。

年会費の未納は避ける

もう参加することはない学会だからと脱会手続きをせずに未納状態になることは、トラブルの原因になるので避けるべきです。未納状態のままでも、脱会しない限り会員資格を所持している可能性が高く、年会費の支払義務が発生する可能性があります。

動画配信サービスの契約を解除するのを忘れていても、「(結果的に)その期間は動画を見なかったから、料金を払わない」ということはできないのと同じです。

大学の卒業時の判断は忘れずに

大学を卒業(あるいは中退)するタイミングで年会費を払い続けるか(学会員のままいるか)は必ず判断しましょう。

卒業したら関係ないからと、脱会手続きもせず年会費も払わないでいると、数年後に数年分の年会費をまとめて支払うことになる可能性も考えられます。

学生会員と一般会員は年会費の金額が異なることが多いです。大学卒業後は一般会員になって年会費の支払い額も増えるので、脱会手続きを忘れると面倒なことになります。

大学を離れてしまうと、大学での日常は過去になります。学会のことも忘れてしまう可能性が高いので、大学を卒業・中退が決まったら、必ず在学中に脱会手続きを検討しましょう。

脱会する場合の注意点

脱会する場合には、事前に指導教員に相談することをおすすめします。自分では「もう卒業するまで発表することはないだろう」と思って教員に相談せずに脱会したら、翌年に教員から発表を提案される、という事態も起こりえます。

相談した結果、脱会することになった場合でも、「一度脱会したら、再入会することはできるのか」は学会の担当窓口に確認しておきましょう。再入会が難しい学会の場合は、脱会は慎重に検討する必要があります。

学会員になるために会員の推薦が必要な学会の場合も、脱会には慎重になるべきです。なぜなら、再入会する際のハードルが高くなるからです。入会と脱会を繰り返す人を推薦したいと思う会員は少ないでしょう。

まとめ

この記事では、学会年会費は学生の自己負担となる場合が多い理由、年会費を支払う際の注意点などを解説しました。

この記事で紹介したポイントを踏まえ、学会年会費についての理解を深めることで、安心して学会活動に臨むことができれば幸いです!

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