【論文の書き方】 Preliminary Abstract (プレ要約) 執筆のすすめ【学会発表にも】

研究・実験・勉強

論文や学会発表で苦労していませんか?そんなあなたにオススメなのが「プレ要約」です。プレ要約を書くことで「自分の研究を簡潔にまとめて、研究の全体像を把握し、論文執筆や発表の準備を効率的に進めること」ができます。

私が学生の頃に、海外から招いた講師が行う「論文の書き方についてのセミナー」を受講する機会がありました。そのセミナーの中で、「論文を書く際には最初に Preliminary Abstract (プレ要約) を書け」と教わりました。それ以降、私が学会発表の要約・スライドを作成する際や論文執筆の際には「プレ要約」を作成することにしています。学生を指導する際も「プレ要約」を作成して貰うこともあります。

この記事では、プレ要約とは何か、なぜプレ要約を作成するべきなのか、そしてどのようにプレ要約を作成すれば良いのかを、具体的な例を交えて詳しく解説します。

プレ要約を作成することで、以下のメリットが得られます。

  • 研究の全体像を把握できる: 自分の研究がどの段階にあるのか、何が問題なのかを明確にすることができます。
  • 論文執筆や発表の準備を効率化できる: プレ要約をベースに論文や発表スライドを作成することで、時間を大幅に節約できます。
  • 指導教員からのフィードバックが得られやすい: プレ要約は、指導教員に自分の研究を説明する際の有効なツールとなります。

この記事が、プレ要約を作成して研究を効率的に進める助けになると幸いです。

プレ要約とは何か?

プレ要約とは、自身の研究に関して下記を各々1-2文で記載します。

  1. 研究を行う動機となった問題点、研究課題
  2. 1に対するアプローチや方法
  3. 主要な結果
  4. 結論

1-2文で収まらない時は3文以上になっても構いません。ただ、文章の数や文字数は可能な限り少なくしてください。自分の研究のエッセンスは何かを考えて、そのエッセンスのみを記載するように心がけましょう。文字数・文章数が多いと、何が大事か結局分からないことになります

例として、「カレーに入れるニンジンを切る最適な角度の研究」の場合で記載してみます。なお、内容は私が適当に考えたものです。

  1. 研究を行う動機となった問題点、研究課題 → カレーに入れるニンジンの切り方は乱切りが多い。他の切り方でニンジンを切ることで、より良いカレーが作れるのではないかと考えた。
  2. 1に対するアプローチや方法 → 様々な切り方のニンジンを用いてカレーを作成した。各切り方について、ニンジンの柔らかさやうまみ成分量の計測およびカレーの美味しさについてのアンケート調査を行った。
  3. 主要な結果 → 乱切り以上に、ニンジンが柔らかくなり、うまみ成分量が増える切り方が複数あった。それらの切り方で作ったカレーは、乱切りで作ったカレーよりも美味しいというアンケート結果が得られた。
  4. 結論 → 乱切り以外の切り方でニンジンを切ることで、より良いカレーを作れる可能性が示された。

プレ要約を作成するメリットは?

プレ要約を作成するメリットは下記の通りです。

  1. 学会発表や論文執筆を行える段階か分かる
  2. 添削が容易である
  3. 要約・発表スライド・論文の作成が容易になる

学会発表や論文執筆を行える段階か分かる

プレ要約は学会発表や論文執筆が可能かの目安になります。

しっかりとしたプレ要約を書くことができるならば、学会発表や論文執筆ができる最低限のロジックやデータがあると判断できます。スライドや文章の推敲、細かいデータ収集を行えば、学会発表や論文投稿もきっとできるでしょう。

逆に、しっかりとしたプレ要約が書けないならば、ロジックやデータなどいずれかに問題がある可能性が高いです。プレ要約が書けない時は、どこに問題があるか考えてみましょう。

添削が容易である

プレ要約は、指導教員やPIに添削依頼する際に役立ちます。

学会発表や論文執筆の際は、まずはプレ要約の添削を依頼すると良いと思います。

プレ要約の添削は

  • 文章量が少ないので、添削の負担が少ない
  • 方向性が間違っていて0から作り直すことになってもダメージ最小限

プレ要約の添削を受けずに、そもそもの方向性が間違った状態でスライドや論文を完成させてしまうと、悲劇です。

方向性が間違った上で作った完成形は、添削する方もされる方もしんどいです。100まで作ったものを壊して0から作り直すのは、それを指示する方もも指示される方も「どうしてこうなった…」感が半端ないです。

プレ要約という初期段階で方向性が合っていることは確認して貰えば、そのような悲劇が防げます。

プレ要約の添削を依頼する際の注意点として、「プレ要約というものは、それほど一般的なものではない」ということは認識すべきでしょう。いきなりプレ要約というワードを出しても伝わりません。プレ要約の添削を依頼する際は、「プレ要約とはどういうものか」や「なぜプレ要約の添削を依頼するのか」を説明する方が良いと思います。

また教員・PIによっては「未完成の状態で添削を依頼するな! 完成したら見せろ!」という人もいるかも知れません。そのあたりはケースバイケースで現場の判断にお任せします。

要約・発表スライド・論文の作成が容易になる

プレ要約がきちんと書ければ、その後の要約・スライド・論文の作成も容易になります。

要約 → 学会発表の登録時に必要な要約は、プレ要約に文章を補足して肉付けするだけで作成することができます。

スライド → 発表スライドの作成は、(プレ) 要約の文章を基にして、要約の各文に対応するスライドを作成することを意識すれば、大きな間違いはないと思います。

論文 → 論文本文も、プレ要約に基づいて作成しましょう。プレ要約の1-4は、論文本文の各要素に対して概ね次の様に対応します。

  1. 研究を行う動機となった問題点、研究課題論文の「背景」
  2. 1に対するアプローチや方法論文の「材料と方法」
  3. 主要な結果論文の「結果」
  4. 結論論文の「結論」

スライド作成や論文執筆で迷走しても、プレ要約を読み返すことで軌道修正することもできます。

まとめ

プレ要約を作成することで、論文執筆や学会発表をスムーズに進めることができます。研究の全体像を把握し、論文や発表スライドの作成を効率化することができます。この記事で紹介した方法を参考に、ぜひプレ要約を作成してみてください。

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