「英語で論文を書くなんて難しそう…」そんな風に思っていませんか?実は、正しい手順さえ知っていれば、誰でも英語論文(卒業論文・修士論文・博士論文・投稿論文)を作成することができます。この記事では、英語論文の書き方を初めて学ぶ学生に向けて、論文作成の全手順をまとめています。
論文作成のステップは大きく分けて8つ。それぞれのステップで、具体的な作業内容や注意点、そして参考になる記事を紹介していきます。また、論文作成の際に役立つツールや、英文校閲についてについても解説します。
この記事が、英語論文の作成に対する不安の解消や、スムーズな論文執筆の参考になれば幸いです。
この記事は下記の様な使用方法をイメージして執筆したものです。
教員「英語で論文を書いてみてください」
学生「どうやって書けば良いですか?」
教員「この記事を読んでください」
具体的な記載内容としては、私が学生時代に拝聴した下記の講演内容を参考に、学生指導用にごくごく簡単にまとめたものです。かなりアレンジも加えていますので、原文とはニュアンスが異なる点もあるかと思います。
「英語で論文を書く時の心構え」を知る
まずは下記の記事を読んで「英語で論文を書く時の心構え」を知りましょう。
英語論文執筆を成功させるための心構えについて解説した記事です。「最初は日本語で書いても良い」「プレ要約から始めよう」など、論文執筆の際に役立つ考え方や、陥りがちな落とし穴について紹介しています。
「プレ要約」を書く
次に下記の記事を読んで「プレ要約」を書きましょう。
簡単に記載すると、プレ要約とは自身の研究に関して下記を各々1-2文で記載したものです。
- 研究を行う動機となった問題点、研究課題
- 1に対するアプローチや方法
- 主要な結果
- 結論
「材料と方法」を書く
「材料と方法」は最も書くのが簡単な章(のはず)です。実験に用いた「材料と方法」を書きましょう。複数の実験を行っている場合は、実際に研究を進める過程で行った順番で書くことが多いです。
ですが、必ずしも実際に行った順で論文中に記載する必要はありません。プレ要約で語っているストーリーを説得力を持って語れる順番に実験内容を記載しましょう。
先行研究で同様の実験が行われている場合には、その論文の「材料と方法」の書き方を参考にしても良いでしょう。もちろん、ただコピペしてはいけません。剽窃になります。そもそも自身の実験を適切に説明できるのは自分の言葉だけなので、コピペする意味がないです。
「材料と方法」の内容は後述する「結果」の内容によっても変わります。「結果」を書き終えたらまた「材料と方法」の内容を推敲しましょう。
「結果」を書く
「結果」は「材料と方法」の次に書くのが簡単な章(のはず)です。実験の結果を記載していきましょう。
「材料と方法」で記載した順番に実験結果を紹介していくことになります。「結果」の書き方を考えることは、図・表・グラフ・写真などを紹介する順番を考えることとほぼ同義です。説得力を持ってストーリーを語れるような順番で結果を紹介していきましょう。
記載する「結果」はプレ要約で語っているストーリーに関連している必要があります。どんなに苦労して得た結果でも、論文のストーリーと関係ない結果を記載してはいけません。
「イントロダクション」を書く
下記の記事を読んで「イントロダクション (Introduction)」を書きましょう。
簡単に記載すると、イントロダクションは下記の4つの段落で書きます。
- 第1段落 → 自分の研究への導入 (「対象とする研究分野」や「その分野での問題」について記載)
- 第2段落 → 問題 (第1段落で記載) について、既報を引用しながら解説
- 第3段落→問題 (第1段落で記載) と既報 (第2段落で記載) との間のギャップを指摘
- 第4段落 → 自分の研究の目的・アプローチ・成果の記載
各段落の書く順番は「第4段落 → 第3段落 → 第1段落 → 第2段落」です。
「考察」を書く
下記の記事を読んで「考察 (ディスカッション、Discussion)」を書きましょう。
考察は書き方のパターンが沢山あると思うので、書き方の正解はないように思います。上述の記事では考察の書き方のパターンにとして下記の3つを紹介しています。
- 今回の研究で得られた結果の詳細な説明・解釈 (結果で書ききれなかった内容など) を記載
- 今回の研究の限界や今後に必要となる実験について記載
- 今回の研究が他の研究分野や社会に対して与える影響を記載
引用文献リストを作る
引用文献リストは文献管理ツールを使用して作成しましょう。文献管理ツールを使うことで、上述した「材料と方法」・「結果」・「イントロダクション」・「考察」を記載する過程で関連文献を文中に引用していけば、文献リストが勝手に作成されます。
文献管理ツールを使わずに手作業で引用文献リストを作成することはおすすめしません。投稿論文のフォーマットに合わせて文献名や引用番号を入力する作業は、人力でやると作業量が膨大になります。その作業自体で獲得できるスキルもほとんどありません。私も学生時代には手作業で引用文献リストを作っていました。文献を1つでも追加・削除すると全ての引用番号がずれるので発狂していました。文献管理ツールを使えば引用番号も勝手に振られるので発狂することもありません。
私は文献管理ツールとして EndNote を使用しています。英語版を使用していますが全く問題なく使用できます。お値段は高くなりますが日本語版もあります。EndNote basic という無料版で使用感を確認するのも良いと思います。
EndNote には論文のPDFをダウンロードできる機能があるのも便利です。EndNote に登録している論文を複数選択してまとめてPDFダウンロードすることもできます。引用文献リスト中の論文を読み返したい時も便利です。PDFを見つけてくれない場合もありますが、その時は EndNote に表示されるリンクから出版社HPに飛ぶこともできます。
英文校閲を依頼する
日本語を母語としない人間が自然な英語を書けるようになるには相当の経験が必要です。初めて英語論文を執筆する人が、ネイティブが読んで不自然でない英語表現をするのは至難の技だと思います。
できるだけ自然な英文を書く方法には「英文校閲を業者に依頼する」や「自然な英語を自力で書くことを目指して英語文法書を何冊も読んで勉強する」などいくつかの手段があります。「自分・教員・ラボ」の「目的・目標」を踏まえて手段を選択しましょう (英文校閲は業者に依頼していち早く論文を発表したいのか、論文発表が遅くなったとしても自力でネイティブレベルの英語で論文を書けるようになりたいのか等)。
いち早く論文を投稿・発表したい場合、「何を言いたいかは分かる」レベルの英語で文章が書けたら専門業者に英文校閲を依頼するのがおすすめです。ネイティブでない人間が自然な英文を考えるのは労力と時間がかかるし、ネイティブには結局かなわないことが多いです。
英文校閲にはお金がかかるので指導教員と相談してください。大学によっては投稿論文の英文校閲の依頼時に金銭的サポートをしてくれる場合があるので調べてみましょう。
まとめ
この記事では、英語論文の書き方を初めて学ぶ学生に向けて、論文作成の手順を8つのステップに分けて解説しました。それぞれのステップで、具体的な作業内容や注意点、そして参考になる記事を紹介しました。
この記事の方法が論文執筆にあたり万能で最適なものだとは思いません。それでも、論文の書き方手順についての (完璧ではないにしても) 具体例があれば、初めて論文を書く時の苦労を幾分か減らせるのではないかと思い、本記事を執筆しました。
この記事が、論文を始めて書く人が「何をしたら良いか分からん」という時の一助になると幸いです。
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