【ネタバレあり】『映画ちいかわ 人魚の島のひみつ』を徹底考察|セイレーンの歌に隠されたSOSメッセージも

雑談

※本記事は映画の内容に関するネタバレを多分に含みます。未視聴の方はご注意ください。

「ちいかわの映画、感動したけど正直よく分からない部分があった…」

「セイレーンはなぜあんなことをしたの?」

映画を見終えたあと、そんなモヤモヤを抱えている方は多いのではないでしょうか。

この記事では、劇場版『映画ちいかわ 人魚の島のひみつ』の随所に散りばめられた謎や伏線を、漫画版第8巻の内容も参照しながら一つひとつ丁寧に考察していきます。

ネット上で話題になっている「歌に隠されたSOSメッセージ」説なども取り上げつつ、物語の裏側にある登場人物たちの心情を深掘りしてみました。

読み終える頃には、あの切ないラストシーンの意味がもう一段深く見えてくるはずです。

なぜ「カンタンな討伐で報酬100倍」「食べ物実質無料」は怪しいのか

物語の冒頭、ちいかわたちが島へ向かうきっかけになったのは、1枚のチラシでした。そこには「カンタンな討伐で報酬100倍」「食べ物は実質無料」という、いかにも心惹かれる文言が並んでいます。

出典:ナガノ『ちいかわ なんか小さくてかわいいやつ(8)』(講談社、モーニングコミックス)

しかし商売の仕組みを考えれば分かる通り、うまい話には必ず裏があります。何の理由もなく報酬が100倍になったり、食べ物がタダになったりすることはありません。もし「観光客誘致のための期間限定キャンペーン」といった明確な理由があるならまだ納得できますが、劇中では報酬100倍はただの嘘であり、実質無料に見えた食事もじつは討伐報酬に含まれていたことが後に判明します。

おいしい話には必ず理由があり、お得に見える裏では誰かがその対価を支払っているものです。この構造は、私たちの日常にも通じるところがあるのではないでしょうか。

余談ですが、この映画を見に行った映画館のあるショッピングモールの携帯ショップには「スマホが1円で貰える」というキャンペーンのチラシが貼られていました。スマホが実質1円で手に入るとは実にお得な話ですが、その差額分は一体誰が負担しているのでしょうか。

島民の歌に隠されたSOSメッセージの意図とは

ちいかわたちが島に到着した際、島民たちが歌っていた歌の歌詞。そのフレーズの頭文字をつなげると「お詫びに助けて」というメッセージが隠れている、という考察をネット上で見かけました。

出典:ナガノ『ちいかわ なんか小さくてかわいいやつ(8)』(講談社、モーニングコミックス)

もしこれが意図的に仕込まれたメッセージだとすると、この歌はセイレーンが島に来た当初から歌われていたという描写があることから、島民からちいかわたちへ向けたものではなく、島民からセイレーンへ向けたメッセージだったと考えられます。

出典:ナガノ『ちいかわ なんか小さくてかわいいやつ(8)』(講談社、モーニングコミックス)

だとすれば、「お詫び」とは一体誰が誰に対して行うものなのでしょうか。少なくとも「助けて」は、セイレーンが島民を助けるという意味だと思われます。とすれば、お詫びの主語もセイレーンであり、セイレーンから島民へのお詫びだと考えるのが自然です。

「お詫び」とは、相手に迷惑や不快な思いをさせたことを謝る言葉です。セイレーンは島民にたくさんのごちそうを用意させることで負担をかけていた、あるいは不快な思いをさせていた可能性があり、そのお詫びとして「助けてほしい(島民を食べないでほしい、歌の力で農作物を育ててほしい)」という願いを歌に隠していたのかもしれません。

ただしこのメッセージは、セイレーンに届くことを本気で期待していたというよりも、セイレーンに聞かせる歌にこっそり本音を忍ばせることで、島民たちの憂さ晴らしのような意味合いがあったのではないかとも感じられます。

なぜ島民は到着の翌日にセイレーン討伐の依頼を説明したのか

ちいかわたちが島に到着した翌日、島民たちはついにセイレーン討伐の依頼内容を説明します。到着当日ではなく、翌日説明したのはなぜでしょうか。

理由の一つとして考えられるのは、到着初日に振る舞われたごちそうが、実は報酬の一部に含まれていたという点です。これが物語の冒頭のチラシにあった「食事は実質無料」というカラクリの正体でした。

出典:ナガノ『ちいかわ なんか小さくてかわいいやつ(8)』(講談社、モーニングコミックス)

報酬の一部であることを明言せずにまずごちそうを食べさせ、その後で討伐対象や報酬について説明することで、ちいかわたちに「もう報酬の一部を受け取ってしまったし、親切にしてもらった手前、今さら断りづらい」という心理的な負い目を感じさせる狙いがあったのかもしれません。

なぜ島民は「討伐報酬100倍」という嘘をついたのか

到着翌日、ちいかわたちは島民から「実際には報酬はない」ことを聞かされます。では、なぜ島民たちはチラシに「報酬100倍」という嘘を書いたのでしょうか。

考えられる理由は、セイレーン討伐に見合うだけの報酬を用意できなかったものの、それでもどうしてもセイレーンを討伐してほしかったから、というものです。

チラシに正直に「報酬は島の食事と特産品の詰め合わせです」と書いてしまえば、討伐者はなかなか集まらなかったかもしれません。だからこそ嘘をついてでも島に来てもらい、ごちそうでもてなして断りにくい状況を作った上で、あらためて討伐と報酬について説明する必要があったのでしょう。

なぜ島二郎はセイレーンがまだ起きていないと嘘をついたのか

セイレーンが眠っている隙に、捕まっていたハチワレたちと一緒に脱出を試みる場面。その最中、島二郎はセイレーンが目を覚ましたことに気づきます。

出典:ナガノ『ちいかわ なんか小さくてかわいいやつ(8)』(講談社、モーニングコミックス)

にもかかわらず島二郎は、ちいかわたちに「セイレーンが起きる前に走れ」と伝え、セイレーンが目覚めたことをあえて言いませんでした。これはなぜだったのでしょうか。

出典:ナガノ『ちいかわ なんか小さくてかわいいやつ(8)』(講談社、モーニングコミックス)

おそらくこれは、ちいかわたちをパニックにさせず、大声を出させないまま静かに逃がすための配慮だったと考えられます。まだセイレーンが眠っていると装うことで、混乱なく冷静に行動させようとしたのでしょう。

さらに、セイレーンがまだ寝ていることにしておけば、「貝を取ってくる」と言いながら実際にはセイレーンの足止めに向かうという説明も成り立ちます。もしセイレーンが起きていると正直に伝えていたら、その状況で貝を取りに行くという行動はいかにも不自然で、嘘だとすぐに見抜かれてしまったはずです。

出典:ナガノ『ちいかわ なんか小さくてかわいいやつ(8)』(講談社、モーニングコミックス)

セイレーンが島民を襲う理由を説明しなかったのはなぜか

セイレーンは島民を襲う理由を一切明らかにしていませんでした。実際、ヒトハとフタバを除く島民たちは、ちいかわたちが来るまで人魚が食べられた事実そのものを知りませんでした。

出典:ナガノ『ちいかわ なんか小さくてかわいいやつ(8)』(講談社、モーニングコミックス)

ではなぜセイレーンは、島民に理由を説明したり、「人魚を食べた犯人を差し出せ」と要求したりしなかったのでしょうか。ここでは3つの理由を考えてみます。

理由1:島民を交渉相手と見なしていなかった可能性
もし私たちの大切な人が野生動物に襲われたとして、その動物に復讐したい気持ちは理解できても、同じ山に住む別の動物に「犯人を差し出せ」と交渉しようとは普通思わないでしょう。

これは極端な例ですが、セイレーンにとって島民たちは、対等に話し合う相手ではなかったのかもしれません。島民を食べることと犯人を捜すことの間に、そもそも大きな違いを感じていなかった可能性もあります。

理由2:島民全体への怒りや制裁の感情があった可能性
大切な仲間の人魚を食べられたことで、セイレーンには犯人個人だけでなく島民全体への恨みや怒りが生まれていたのかもしれません。犯人を捜し出すと同時に、島民全体に制裁を加える意味合いも込めて、島民を襲い続けていた可能性があります。

理由3:単純に「美味しかった」から
劇中には、セイレーンが島民に味付けをして食べる描写があります。島民を食べたら美味しかったため、食べること自体が目的の一つになっていたのかもしれません。

出典:ナガノ『ちいかわ なんか小さくてかわいいやつ(8)』(講談社、モーニングコミックス)

また、セイレーンが島民を襲うようになってからは、島民からのごちそうの献上がなくなっていた可能性もあり、その代わりとして島民を食べていたとも考えられます。

なぜフタバはヒトハにも人魚の肉を食べさせようとしたのか

ヒトハに人魚の肉を食べさせられ、不老不死となって意識を取り戻したフタバ。しかし目覚めた直後、フタバは今度は自分からヒトハに人魚の肉を食べさせようとします。これはなぜだったのでしょうか。

出典:ナガノ『ちいかわ なんか小さくてかわいいやつ(8)』(講談社、モーニングコミックス)

自分が人魚の肉を食べさせられたと気づいたフタバは、不老不死になってしまった事実に絶望したはずです。友人や知り合いが年を重ねて先立っていく中、自分だけがいつまでも孤独に生き続けなければならない未来に、強い恐怖を覚えたことでしょう。

出典:ナガノ『ちいかわ なんか小さくてかわいいやつ(8)』(講談社、モーニングコミックス)

そんな絶望のさなか、自分を不老不死にしたヒトハへの怒りと、「一緒に生きてほしい」という切実な思いから、衝動的・反射的に手元にあった人魚の煮付けを食べさせてしまったと考えられます。

出典:ナガノ『ちいかわ なんか小さくてかわいいやつ(8)』(講談社、モーニングコミックス)

もし手元にすぐ食べられる状態の人魚の肉がなければ、あるいはフタバが少しでも冷静になれる時間があれば、無理にヒトハに食べさせることはなかったかもしれません。ちょっとしたタイミングの差で、「不老不死の苦しみをヒトハには味わわせたくない」とフタバが思い直した可能性もあるでしょう。

セイレーンは島民を襲わないと約束したのか

ちいかわたちがセイレーンに「もう島民を襲わないで」と頼んだ際、セイレーンは「わかった」と答えました。しかしこれは本当に「約束」だったのでしょうか。

結論から言えば、明確な約束をしたわけではないと考えられます。セイレーンが「わかった」と言ったのは、フタバの単3電池が外れる瞬間を目撃した直後のことでした。

出典:ナガノ『ちいかわ なんか小さくてかわいいやつ(8)』(講談社、モーニングコミックス)

漫画版の該当コマを見ると、「わかった」と言っているセイレーンは首を横に振る仕草をしています。「襲わないでほしい」というお願いに対して首を横に振っているとすれば、この「わかった」は依頼への同意ではなく、「(犯人が) わかった」の意味だったと考えるのが自然です。

出典:ナガノ『ちいかわ なんか小さくてかわいいやつ(8)』(講談社、モーニングコミックス)

ラッコ先輩はさらわれた島民について、なぜ何も語らなかったのか

キャンプファイヤーの場面で、島二郎から行方不明の島民たちを今も捜し続けていると聞かされたラッコ先輩は、それに対して何も語りませんでした。

出典:ナガノ『ちいかわ なんか小さくてかわいいやつ(8)』(講談社、モーニングコミックス)

セイレーンに捕らわれていたラッコ先輩は、さらわれた島民たちがセイレーンに食べられてしまったであろうことを、おそらく察していたはずです。それでもなぜ、そのことについて口をつぐんだのでしょうか。

考えられる理由は、さらわれた島民が食べられていたと知れば、残された島民たちのセイレーンへの怒りが増幅し、さらなる争いに発展しかねないから、というものです。セイレーンがこれ以上島民を襲わないと言っている (少なくとも島民たちはそう信じている) 以上、島民側から手を出さなければ争いは起きずに済むかもしれません。

そのためラッコ先輩は、さらわれた島民が食べられた可能性についてはあえて触れず、新たな争いの火種をまかないようにしたのではないでしょうか。

ちいかわはキャンプファイヤーの時、ヒトハとフタバに何を言おうとしたのか

ヒトハとフタバの家で人魚のウロコを見つけたちいかわは、キャンプファイヤーの最中に2人へ近づき、何かを言おうとしました。しかし結局、何も言わずにその場を離れてしまいます。ちいかわは一体何を尋ねようとし、そしてなぜ言葉を飲み込んだのでしょうか。

出典:ナガノ『ちいかわ なんか小さくてかわいいやつ(8)』(講談社、モーニングコミックス)

ちいかわが何を聞こうとしていたのか、正確なところは分かりません。単純な興味や好奇心から「人魚を食べたのか」を確かめたかったのかもしれませんし、もし食べたと分かれば正義感から、島民やセイレーンに真実を伝えるよう促そうとしたのかもしれません。

それでもちいかわが最終的に何も言わなかったのは、話しかけようとした瞬間、2人の手が強く握られ、震えているのに気づいたからでしょう。

出典:ナガノ『ちいかわ なんか小さくてかわいいやつ(8)』(講談社、モーニングコミックス)

2人が人魚を食べたのか、食べたとすればどんな経緯だったのかは分からないままでしたが、震える手を見て、2人が人魚の話題を恐れていることをちいかわは察したはずです。もし2人が人魚を食べていて、それが他の島民やセイレーンに知られれば、2人の身に危険が及ぶかもしれない、そうちいかわは考えたのかもしれません。

一方で、ちいかわが何も言わず、犯人が特定されないままだったとしても、セイレーンは島民を襲わないと言っている (と皆が思っている) ため、島の平穏はひとまず保たれます。こうした葛藤の末に、ちいかわはヒトハとフタバへの問いかけをやめたのではないでしょうか。

ウサギは人魚の肉を食べた犯人を知っていたのか

キャンプファイヤーで、ちいかわが何も言わずにヒトハとフタバのもとから戻ってきた場面。このときウサギは、ちいかわの頭を撫でていました。同じ場にいたハチワレは撫でていないことから、ウサギには何らかの意図があったと考えられます。

出典:ナガノ『ちいかわ なんか小さくてかわいいやつ(8)』(講談社、モーニングコミックス)

おそらくウサギは、ヒトハとフタバが人魚を食べたことにすでに気づいていたのでしょう。そしてちいかわが2人に何かを尋ねようとしながらも、結局何も言わずに戻ってきた姿を見て、葛藤の末にその判断を下したちいかわを、そっと労っていたのではないでしょうか。

なぜヒトハとフタバは2人で島を出たのか

映画の終盤、ヒトハとフタバは住み慣れた島を離れ、2人だけで新しい島へと旅立ちます。なぜ2人は島を出る決断をしたのでしょうか。

それは、セイレーンに襲われた際にフタバの単3電池が外れる瞬間を、セイレーンに見られてしまったことに2人が気づいたからだと考えられます。セイレーンの「わかった」という言葉が、「(人魚を食べた犯人が) わかった」という意味だったことにも、2人は思い至ったはずです。

出典:ナガノ『ちいかわ なんか小さくてかわいいやつ(8)』(講談社、モーニングコミックス)

このまま島に留まっていれば、いずれセイレーンに見つかり捕らえられてしまう。そう考えた2人は、島を出ることを選んだのでしょう。

物語の最後には、2人が新しい島の洞窟へ入ろうとする場面が描かれています。

出典:ナガノ『ちいかわ なんか小さくてかわいいやつ(8)』(講談社、モーニングコミックス)

これは、人魚の肉を食べたとされる伝説の人物「八百比丘尼 (やおびくに)」が最期を迎えたとされる洞窟をイメージしているという説もあるようです。

八百比丘尼入定洞|おすすめの観光スポット|【公式】福井県 観光/旅行サイト | ふくいドットコム
人魚の肉を食べて八百歳まで生きたという八百比丘尼伝説。全国を行脚し、貧しい人を助け、椿の種をまき花を咲かせた後、若狭に戻り亡くなったという洞穴。当時を偲ぶ椿の花が今も咲き誇り、健康長寿を願う人々のお参りが今も絶えません。

もし、いつ・誰が・どう行動していれば結末は変わったのか

ここからは、この物語の中で誰がどのタイミングでどう行動していれば、もう少しハッピーな結末に近づけたのかを考えてみます。

あくまで結果論であり、必ずしも「正解」があるとは限りません。仮に正解があったとしても、限られた時間や追い詰められた精神状態の中でその選択ができなかったとしても、一概には責められないと思います。

私たちは常に最適な答えを選びながら生きていけるわけではないからです。

ヒトハとフタバはセイレーンに気づいた時点で船を遠ざけるべきだったのでは?

出典:ナガノ『ちいかわ なんか小さくてかわいいやつ(8)』(講談社、モーニングコミックス)

ヒトハとフタバはセイレーンに気づいた時点で船を遠ざけるべきだった」という考えは、たしかにその通りかもしれません。セイレーンは体の大きさも島民とはかけ離れており、危険な存在と見なすこともできます。実際にヒトハはセイレーンを目にした際、恐怖の感情を見せていました。

出典:ナガノ『ちいかわ なんか小さくてかわいいやつ(8)』(講談社、モーニングコミックス)

一方でフタバは、歌の力で島の農作物を育ててくれるセイレーンに、親愛の情を抱いていました。もしセイレーンが2人に気づき、みんなで一緒に楽しく過ごせていたなら、この出会いはただの心温まる物語として終わっていたかもしれません。

出典:ナガノ『ちいかわ なんか小さくてかわいいやつ(8)』(講談社、モーニングコミックス)

フタバが瀕死になった時点で、島民やセイレーンに助けを求めるべきだったのでは?

フタバが瀕死になった時点で、島民やセイレーンに助けを求めるべきだった」というのは、もっともな考え方だと思います。

一方で、フタバの命がいつ尽きてもおかしくない一刻を争う状況で、「人魚の肉を食べれば不老不死になれる」という情報を知っており、しかもその人魚のせいでフタバが重傷を負ったのだとしたら、衝動的に人魚の肉を食べさせるという判断に至ったことも理解できます。

仮にセイレーンに事情を説明したとしても、フタバを助けてくれるとは限りません。セイレーンも、治療の方法を知らない可能性がありますし、仲間の人魚を差し出すという提案をしてくれるとも思えません。それどころか、何かの拍子にセイレーンの機嫌を損ねれば、ヒトハやフタバに危険が及ぶかもしれない。ヒトハはもともとセイレーンを恐れていたのですから、そう考えたとしても不思議ではありません。

他の島民に相談したとしても、フタバを治す方法は出てこないだろうと思ったかもしれません。それどころか、セイレーンとの関係悪化を恐れた島民たちから、セイレーンに事情を伝えに行くこと自体を止められる可能性もあります。島全体が危険にさらされることを避けるため、最悪の場合ヒトハは見殺しにされてしまうかもしれません。

加えて、島民やセイレーンに事情を説明している間に、フタバの命が尽きてしまう恐れもあります。また、周囲に事情を話してしまえば、人魚の肉を食べさせるという選択肢そのものが極めて取りにくくなります。皆が事情を知っている状況で人魚がいなくなれば、真っ先に疑われるのはヒトハだからです。

以上を踏まえると、フタバに人魚の肉を食べさせたヒトハを、100パーセントの力で責めることはできないと思います。

セイレーンが島民を襲い始めた時点で、真実を打ち明けるべきだったのでは?

セイレーンが島民を襲い始めた時点で、真実を打ち明けるべきだった」というのは、第三者から見ればもっともな意見ですが、ヒトハとフタバの立場に立てば、真実を打ち明けるのは相当に難しい選択だったと思われます。

そもそも2人のせいで島民が犠牲になっているのですから、その事実を島民やセイレーンに明かせば、2人自身が無事では済まないでしょう。「他人の命のために自分の命を差し出すこと」は聞こえは良いですが、実際に行うのは困難です。

出典:ナガノ『ちいかわ なんか小さくてかわいいやつ(8)』(講談社、モーニングコミックス)

加えて、セイレーンは島民を襲う理由を明らかにしていませんでした。ヒトハとフタバを除く島民たちは、ちいかわたちが来るまで、人魚が食べられた事実を知りませんでした。

だからこそ、2人が黙り続ければ、セイレーンが島民を襲う理由が自分たちにあることを隠し通せる可能性がありました。セイレーンがいずれ諦めて、島民を襲うのをやめるという展開もあり得たはずです。もっとも、セイレーンは「犯人を捜している」と明言していたわけではないため、犯人ヒトハとフタバな名乗り出たとしても、島民を襲うのをやめるとは限らないとも考えられます。

いつか去るかもしれない脅威に黙って耐え続けること」と「脅威を取り除けるとは限らないが、確実に命の危険にさらされること」があったとして、前者を選ぶという判断を、一概に間違いだとは言えないでしょう。

まとめ

劇場版『ちいかわ』は、可愛らしい絵柄とは裏腹に、島民たちの打算やヒトハとフタバの葛藤など、人間味あふれる複雑な感情が随所に描かれた作品です。

今回取り上げたいくつかの考察はあくまで一つの解釈にすぎませんが、細部に込められた伏線や心情を読み解くことで、映画を見終えた後の余韻がより深いものになるはずです。

ぜひ漫画版第8巻もあわせて読み、あなたなりの答えを見つけてみてはいかがでしょうか。

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