新NISAと現行NISAの違いは!? ~「若手研究者のための資産形成術」の補足記事その2~

生活

 以前、所属学会誌に「若手研究者のための資産形成術」 (実験動物ニュース 2023年 Vol. 72 No. 1, pp.25-29) という記事を寄稿しました。その際に書ききれなかった内容を補足記事その2として、ここに記載します。その1は「研究者はiDeCo (個人型確定拠出年金) を利用すべきか!? ~NISAと比較したメリット・デメリット~」です。

 今回の内容はNISA (ニーサ,Nippon Individual Savings Account) についてです。株の売却や配当で得た利益は通常20%程度課税されますが,NISA口座という種類の証券口座内で購入した株の利益は非課税となります。「若手研究者のための資産形成術」でNISAについて書きましたが、振り返ると下記2点思う所があります。

  1. NISAには「一般NISA」と「つみたてNISA」があるが、「若手研究者のための資産形成術」では一般NISAの説明は省略した
  2. 2024年1月より現行NISA制度は終了し新NISA制度が始まるが、「若手研究者のための資産形成術」では新NISA制度についての説明ができなかった

 1については、投資初心者にはつみたて投資がおすすめであり、それに適したつみたてNISAの説明に注力したが故です。結果的に記載を分かりやすくできたと思っているので、良い判断だったと思います。

 2については、新NISA制度が発表されたのが、「若手研究者のための資産形成術」の原稿を提出した後だったからです。校正時の大幅な修正を避けるために、新NISA制度についての説明は文中の「免責事項など」に簡単に記載するにとどめました。新NISA制度についての説明が出来たら良かったなと、多少心残りに思っています。

 その心残りを解消するために、本記事では現行NISA制度と比較しながら新NISA制度の説明を行います。比較する都合上、「若手研究者のための資産形成術」ではあまり触れられなかった一般NISAについても説明します。記事の最後には、投資初心者は新NISA制度をどのように活用すべきかについても述べます。

 本記事は投資初心者に向けたものにしたいので、多少不正確になるかも知れないが、できるだけ分かりやすい記載を心掛けます。その点ご留意ください。

  1. 現行NISAの「一般NISA」と「つみたてNISA」について
  2. 現行NISAと新NISAとの違い
  3. 投資初心者の新NISA活用法

1. 現行NISAの「一般NISA」と「つみたてNISA」について

 現行NISAには「一般NISA」と「つみたてNISA」があります。2つの違いを下記表にまとめます。

現行NISAの区分一般NISAつみたてNISA
両者の併用不可
非課税枠年100万円年40万円
非課税期間5年20年
買える金融商品多数の株・投資信託など厳選された投資信託

 一般NISAは年間の非課税枠が100万円と、つみたてNISAの40万円よりも大きいです。一方で一般NISAの非課税期間は5年と、つみたてNISAの20年よりも短いです。一般NISAで買える金融商品は株・投資信託・ETFなど、株に関連するものなら大体買えるイメージです。つみたてNISAで買える金融商品は、星の数ほどある投資信託の中から金融庁が認めた (厳選された) 投資信託です。

 投資初心者は、良質な投資信託のつみたて購入を少額から始めて、長期間継続していくことが望ましいです。また現行NISAでは、一般NISAとつみたてNISAの併用ができません。そのため「若手研究者のための資産形成術」では、投資初心者におすすめのつみたてNISAの解説に紙面を割きました。

2. 現行NISAと新NISAとの違い

 現行NISAと新NISAとの違いについて、下記表にまとめます。

現行NISAの区分一般NISAつみたてNISA
両者の併用不可
非課税枠年100万円年40万円
非課税期間5年20年
買える金融商品多数の株・投資信託など厳選された投資信託
 
新NISAの区分成長投資枠つみたて投資枠
両者の併用
非課税枠年240万円年120万円
生涯1,800万円 (成長投資枠は1,200万円まで)
非課税期間無期限無期限
買える金融商品多数の株・投資信託など厳選された投資信託

新NISAの区分

 新NISA は2024年1月から開始します。新NISAでは「成長投資枠」と「つみたて投資枠」という区分ができます。

  • 現行NISAの一般NISA ≒ 新NISAの成長投資枠
  • 現行NISAのつみたてNISA ≒ 新NISAのつみたて投資枠

と考えて貰ってOKです。買える金融商品も概ね対応していると考えて良いと思います。現行NISAでは一般NISAとつみたてNISAの併用は不可能ですが、新NISAでは成長投資枠とつみたて枠を併用することができます。

新NISAの非課税枠と非課税期間

 新NISAの非課税枠は現行NISAよりも拡大します。

  • 現行NISAの一般NISA の年100万円 < 新NISAの成長投資枠の年240万円
  • 現行NISAのつみたてNISAの年40万円 < 新NISAのつみたて投資枠の年120万円

また新NISAの非課税期間は、成長投資枠とつみたて投資枠の両方とも無期限です。現行NISAは一般NISAが5年、つみたてNISAが20年と期限があります。

 新NISAでは、非課税期間が無期限になった代わりに、生涯の非課税枠が1,800万円までとなります。そのうち、成長投資枠は1,200万円までです。具体例は下記の通り。

〇成長投資枠0円 + つみたて投資枠1,800万円

〇成長投資枠1,200万円 + つみたて投資枠600万円

×成長投資枠1,800万円 + つみたて投資枠0円

その他

  • 現行NISAと新NISAは独立した制度です。現行NISAで利用していた非課税枠がいくらであっても、新NISAの非課税枠は変わりません。
  • 現行NISA口座は2024年1月から自動的に新NISA口座として利用できるようです。従って、現行NISA口座を持っていれば、新NISA口座を新たに開設する必要はありません。
  • 2024年1月以降、現行NISAを利用することはできません。2023年以前に現行NISAで購入した金融商品は、非課税期間 (一般NISAは5年、つみたてNISAは20年) 終了後に売却することになります。

3. 投資初心者の新NISA活用法

 上述のように新NISAは非課税枠も拡大し、非課税期間も無期限となります。投資家にとっては神改正です。新NISA開始を機に、投資を始めるのも良いかと思います。 では「投資初心者が新NISAをどのように活用したら良いか」についてですが、基本的には「若手研究者のための資産形成術」に記載した下記のステップを踏むのが良いと思います。

  1. 支出の見直し
  2. 生活防衛資金の確保
  3. 近い将来に必要なお金の確保
  4. NISAで投資信託を積み立て購入

 新NISAでの投資も、「生活防衛資金 (怪我・事故・リストラなど予期せぬ事態に備えるお金)」と「近い将来に必要なお金 (教育資金・旅行・マイホーム・マイカーなどに必要なまとまったお金)」を貯まった (目途が立った) 後に、余剰資金で行うのが良いでしょう。

 新NISAでは非課税枠も拡大しましたが、月々の積み立て金額は少額から始めることをおすすめします。生活に負担を与えることなく、長期間投資を継続するのが肝要です。まずは数百円~数千円/月から開始して、自身の家計や収入に合わせて増やしていくのが良いでしょう。いきなり新NISAの非課税枠MAXの年360万円 (月30万円) を目指すと、家計を圧迫する原因になりますし (本末転倒)、投資信託の価格変動によって資産額が大きく変わりうるので、心穏やかに長期で投資を継続するのが難しくなります。

 ちなみに2023年中は現行NISAを利用しつつ、2024年から新NISAを利用することで、両者の非課税枠を最大限活用することができます。その場合、2023年中に現行NISAで購入した分は、非課税期間終了後に売却する必要があります。その手間が面倒だと感じるなら、2024年の新NISAの開始を待って、投資をスタートするのもありだと思います。

 現行NISAで投資を開始しない場合でも、2023年中にNISA口座の開設は行って良いと思います。現行NISA口座から新NISA口座への切り替えは自動で行われますし、新NISA利用のスタートダッシュがスムーズになるでしょう。証券口座の開設は無料で行えます。SBI証券や楽天証券などのネット証券で口座を開設するのが、株の取引手数料も安くておすすめです。

 現行NISAや新NISAについてより詳しく知りたい方は、下記参考資料が分かりやすいです。また研究者の資産形成術について興味がある方は、「若手研究者のための資産形成術」 (実験動物ニュース 2023年 Vol. 72 No. 1, pp.25-29) も是非お読みください。

参考資料

書籍

『お金の不安がなくなる 資産形成1年生』(小林亮平,2021,KADOKAWA)

YouTube

『両学長 リベラルアーツ大学』

第235回 【歴史が変わる】新NISAのココがスゴイ5選【株式投資編】

『BANK ACADEMY /バンクアカデミー』

【総まとめ】新NISAはどう変わる?年間投資枠360万円、生涯の投資上限額1,800万円の詳細も分かりやすく解説

『オタク会計士ch【山田真哉】少しだけお金で得する』

【速報!悲報】ロールオーバー不可!2023年のNISAはどうする?GOする!?プロも間違う注意点3選。2024年から生涯無税の新NISAくわしく解説【恒久化/一般・積立ニーサ/未成年/税制改正大綱】

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